日本人に最も多い鉄欠乏性貧血は、「小球性貧血」に分類される貧血の一種です。
では、小球性貧血とは何なのでしょうか?
その特徴や原因について、分かりやすく解説していきます。
小球性貧血とは?
小球性貧血は、赤血球が普通よりも小さくなるタイプの貧血です。血液検査の「MCV」という数値が80fL未満になると、小球性貧血と診断されます。
この貧血が起こる主な原因は次の3つです。
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鉄欠乏性貧血(IDA):体の中の鉄が足りなくなり、ヘモグロビンがうまく作れなくなる。
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慢性疾患に伴う貧血(ACD):病気によって鉄がうまく使えなくなる。
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サラセミア:遺伝によってヘモグロビンの作り方がうまくいかない。
赤血球の大きさはどうやって調べる?
貧血には、原因ごとに種類があります。
最終的にどの種の貧血なのかを特定するにあたり、様々な血液検査の項目が確認されますが、
その中で、赤血球の大きさも、貧血の分類するまでの大きな指標。
赤血球にサイズによって、考えられる貧血が特定されるからです。
血液検査では、以下の3つの数値を見て貧血があるかを判断します。
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赤血球数:赤血球の数
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血色素量(ヘモグロビン値):血液中の酸素を運ぶ成分の量
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ヘマトクリット:血液中の赤血球の割合
MCVは「ヘマトクリット ÷ 赤血球数」で求められ、MCVの基準値は一般的に以下の通りです。
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男性:80〜100 fL
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女性:80〜95 fL

小球性貧血の種類と原因
MCVの値が基準より低いと、小球性貧血と判断されます。
その中でも、最もよくあるのが鉄欠乏性貧血(IDA)です。
貧血の種類 | MCVの変化 | 主な原因 |
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鉄欠乏性貧血 | 低下(<80 fL) | 鉄分不足、消化管出血、偏食 |
慢性疾患に伴う貧血 | やや低下 | 病気(炎症性疾患、腫瘍、感染症など) |
サラセミア | 低下 | 遺伝的要因(ヘモグロビン合成異常) |
MCVが基準値に収まっている場合、赤血球の大きさは正常であり、「正球性貧血」と呼ばれます。
これは、赤血球のサイズに異常がないにもかかわらず貧血が起こっている状態です。
一方、MCVが基準値を下回ると、赤血球が通常よりも小さくなり、「小球性貧血」と診断されます。
逆に、MCVが基準値を上回ると、赤血球が大きくなるため、「大球性貧血」と呼ばれます。

鉄欠乏性貧血と小球性貧血の関係
日本人に最も多い貧血は鉄欠乏性貧血で、小球性貧血の代表的なタイプです。
赤血球は体に酸素を運ぶ大切な役割を担っており、その中心となるのがヘモグロビンという成分です。
ヘモグロビンは鉄分を材料として作られるため、体内の鉄が不足すると十分なヘモグロビンを作れず、赤血球が小さくなり、小球性貧血が引き起こされます。
体は鉄分が足りなくても赤血球を作ろうとしますが、その際、赤血球1つあたりの鉄分量を減らすことで何とか維持しようとします。
その結果、赤血球は通常よりも小さくなり、酸素を十分に運べなくなるのです。
小球性貧血の検査と治療
小球性貧血の診断には、以下の血液検査が必要です。
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MCV(赤血球の大きさ)
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血清鉄(血液中の鉄の量)
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フェリチン(体の中に蓄えられている鉄の量)
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総鉄結合能(TIBC)
治療は原因によって異なります。
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鉄欠乏性貧血(IDA):鉄分を補う(サプリや食事)
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慢性疾患に伴う貧血(ACD):基礎疾患(病気)の治療が優先
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サラセミア:軽度なら経過観察、重度なら輸血や骨髄移植
まとめ:対策には小球性貧血の正しい理解が重要
貧血とは、血液が薄い状態を指すものであり、それ自体は病名ではありません。
ヘモグロビンが少なくなる原因はさまざまで、それぞれに異なる病名がつけられています。
特に、小球性貧血は MCV(平均赤血球容積)が低下 することで診断される貧血の一種であり、日本人に最も多い 鉄欠乏性貧血 がその代表例です。
大切なのは、「貧血=鉄分不足」と決めつけず、MCVを含む血液検査を行い、原因を正確に特定すること。
適切な診断と治療を受けることが、健康維持の鍵となります。
FAQ(よくある質問)
Q1. 小球性貧血になるとどんな症状が出る?
A. 全身のだるさ、めまい、息切れ、集中力の低下、顔色の悪さなどが挙げられます。
特に、赤血球が小さくなることで酸素を運ぶ能力が低下し、全身の酸素供給が不十分になるため、日常生活にも影響を及ぼす可能性があるため、早めの検査と適切な治療が重要です。
Q2. 小球性貧血を改善する食べ物は?
A. 鉄分が多く含まれる食品(レバー、赤身の肉、ほうれん草、小松菜、魚介類)を積極的に摂取することが推奨されます。バランスの取れた食事を心がけ、鉄の吸収を助けるビタミンCと一緒に摂ることが望ましいでしょう。
Q3. 貧血と診断されたら鉄剤を飲めば治る?
A. 鉄欠乏性貧血なら鉄剤が効果的ですが、他の原因の場合は違う治療が必要なので、まずは医師に相談しましょう。