「最近、なんだか疲れやすい」「ちょっと動いただけで息切れがする」──そんな体調の変化に気づいていませんか?実はそれ、単なる疲れではなく、腎臓の病気にともなう“腎性貧血”が関係しているかもしれません。
腎性貧血は、慢性腎臓病などを背景にして起こる貧血であり、進行がゆるやかなために自覚されにくい特徴があります。しかし、放置すると心臓にも負担がかかり、生活の質の低下や合併症のリスクが高まってしまいます。
この記事では、腎性貧血の症状や原因、治療法について、基本からわかりやすく解説します。読み終えたときには、ご自身やご家族の体調に対する理解が深まり、必要な対処が明確になるはずです。
腎性貧血の症状とは?見逃しやすいサインに注意
腎性貧血では、赤血球が減少することで体内の酸素供給が不足し、以下のような症状があらわれます。
- 疲れやすい
- 動悸
- 息切れ
- めまい
これらは一般的な貧血の症状と共通しているため、慢性的な疲れだと見過ごしてしまうことも多いです。特に、慢性腎臓病を抱える方の場合、腎性貧血が進行していても自覚しにくく、心臓など他の臓器への影響が出てから気づくケースも少なくありません。
そのため、こうした症状に「慣れてしまっている」場合でも、一度振り返ってみることが大切ですね。
腎性貧血の原因|腎臓とエリスロポエチンの関係
腎性貧血の主な原因は、腎臓でつくられる「エリスロポエチン(EPO)」というホルモンの分泌低下にあります。
エリスロポエチンの役割
エリスロポエチンは、骨髄で赤血球がつくられる過程を促す重要なホルモンです。造血幹細胞から赤血球へと成熟していく過程を、次のように示せます。
- 造血幹細胞
- 赤血球系前駆細胞
- 前赤血球
- 赤芽球
- 網赤血球
- 赤血球
この過程をスムーズに進行させるために、エリスロポエチンの働きが不可欠です。
なぜ腎臓が関係するのか
エリスロポエチンは主に腎臓でつくられており、腎機能が低下するとホルモンの分泌量が減少します。その結果、十分な赤血球が生産されなくなり、腎性貧血につながります。
また、腎性貧血の診断では、鉄欠乏性貧血など他の原因を除外することも重要です。
腎性貧血とは?|二次性貧血の代表疾患
腎性貧血は、慢性腎不全(尿毒症)などにともなってあらわれる貧血の一種で、「二次性貧血(続発性・症候性貧血)」に分類されます。
日本透析医学会では以下のように定義されています。
腎性貧血とは,腎臓においてヘモグロビンの低下に見合った十分量のエリスロポエチンが産生されないことによってひき起こされる貧血であり,貧血の主因が腎障害以外に求められないものをいう。
腎性貧血という名前のとおり、「腎臓の障害」が起点となる貧血であり、他の貧血との違いを知ることも重要です。
腎性貧血の治療法|原因と赤血球不足の両面から対処
腎性貧血の治療では、次の2つの方向からのアプローチが必要です。
1. 腎臓の病気への対処(原因療法)
慢性腎臓病などに対しては、腎機能の悪化を防ぐ食事療法などが行われます。
- エネルギー制限
- 塩分制限
- タンパク質制限
これにより、腎臓の負担を軽減し、エリスロポエチンの分泌を少しでも回復させることを目指します。
2. 赤血球不足への治療(対症療法)
- エリスロポエチン製剤の注射(ESA)
- 鉄剤の投与(内服または注射)
不足している赤血球を増やすために、人工的にホルモンを補ったり、赤血球の材料となる鉄を補う治療が行われます。
放置するとどうなる?合併症リスクと注意点
腎性貧血は進行がゆっくりなため、自覚されにくいという特性がありますが、決して軽視してはいけません。
貧血の状態が続くと、体内の酸素が不足し、それを補おうと心臓に常に負担がかかります。その結果、心肥大や心不全などの合併症を引き起こすリスクが高まるのです。
「なんとなく体調が優れない」「以前よりも疲れやすくなった」という方は、腎性貧血という可能性も視野に入れて、日々の体調を見つめ直してみましょう。
まとめ|腎性貧血は気づきにくいけれど、対処すれば改善できます
- 腎性貧血は慢性腎臓病にともなって起こる、代表的な二次性貧血です。
- 赤血球をつくるために必要なエリスロポエチンが腎臓で作れなくなることが原因です。
- 症状は疲労感、息切れ、動悸などがあり、放置すると心臓への負担が大きくなります。
- 治療には、腎機能を維持する食事療法と、赤血球を増やす薬剤の併用が必要です。
自覚症状が少なくても、気づいたときには進行しているケースも多い腎性貧血。少しでも不安を感じたら、日常生活の振り返りや健康管理を意識してみてくださいね。


