出産後、理由もなく涙が出たり、ちょっとしたことでイライラしてしまったり――そんな気持ちの揺らぎに悩んでいませんか?
それ、もしかすると“心の問題”ではなく、「鉄分不足」が影響しているかもしれません。最近の研究では、鉄分の不足が「産後うつ」と深く関わっていることがわかってきました。しかも、お母さんの鉄分不足は、子どもの心や体の健康にも影響を及ぼすことがあるのです。
この記事では、鉄分と心の健康の関係をはじめ、重要な指標である「フェリチン」の見方、不調のチェックリスト、子どもへの影響、そして鉄分をしっかり補うためのポイントまで、わかりやすく解説します。
自分と家族の心と体を守るための“気づき”として、ぜひ最後までお読みください。
「産後うつ」の症状チェック
産後の不調は、「疲れてるだけ」「性格の問題」と片づけられがちですが、実は鉄分不足が関係していることもあります。下記のリストを見て、当てはまる項目がないかチェックしてみましょう。
□ チェックリスト
- 憂うつな気分が続く
- 何をするにもやる気が出ない
- 人と会うのがしんどい
- イライラしやすい
- 涙もろくなった
- 集中できない
- よく眠れない
- 育児がつらく感じる
- 子どもや夫に愛情が持てない
- 死にたいと感じることがある
ひとつでも当てはまった方は、心の状態だけでなく「栄養状態」、特に鉄分についても見直してみることをおすすめします。
産後うつと貧血の症状は重なっている
鉄分が足りていないときに出てくる体の不調と、「産後うつ」とされる症状には多くの共通点があります。
鉄分不足でよく見られる症状
- めまい、立ちくらみ
- 動悸、頭痛
- 疲れやすさ、だるさ
- イライラ、集中力の低下
- やる気のなさ
これらの症状がいくつか重なっている場合は、心と体の両面からサポートすることが大切です。
鉄分とうつ病の関係
うつ病はこれまで、ストレスやホルモンバランスの乱れが原因とされてきましたが、栄養不足、とくに鉄分やたんぱく質の不足も関係していると考えられるようになってきました。
精神科医・藤川徳美氏の著書『うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった』(光文社新書)では、うつ症状のある多くの患者さんで「フェリチン(体内の鉄の貯蔵量)」が極端に低く、それを補ったところ改善したというケースが紹介されています。
鉄分は神経伝達物質の合成にも関与しており、心の安定を保つためにも不可欠な栄養素です。

フェリチンの基準値は本当に十分?
フェリチンは、体の中にどれだけ鉄を“ためて”おけているかを示す数値です。日本における基準値は以下の通りです。
- 男性:21~282 ng/ml
- 女性:5~157 ng/ml
ただ、この「女性の下限値5」は国際的に見るととても低く、アメリカなどでは40以下で出産を制限されるケースもあるほどです。
また、鉄剤を飲むときは、胃のムカつきや便秘といった副作用が出ることもあるため、医師のアドバイスを受けながら取り入れることが大切です。

母親が鉄分不足ならその子どもは?
鉄分は、気分や意欲をコントロールするセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質を作る材料でもあります。
お母さんの鉄分が不足すると、気分が安定しづらくなり、イライラや不安感が増えてしまうことも。そして、こうした心理状態は家庭全体の雰囲気に影響し、子どものメンタルにも無意識のうちに影響を与えることがあります。
母親の鉄分不足が子どもの不登校につながることも?
お母さんが小さなことに過敏に反応してしまうと、自分を責めたり、子どもが萎縮してしまったりすることがあります。その結果、子どもが不登校になったり、心身に不調を抱えるケースもあるのです。
まずはお母さん自身が元気でいることが、家族みんなの健康を支える基盤になります。
子どもが鉄分不足
赤ちゃんは、生後6か月くらいまでは胎内にたくわえた鉄分で過ごしますが、それ以降は母乳や離乳食などからの補給が必要です。
お母さんの鉄分が不足していたり、食事バランスが偏っていたりすると、赤ちゃんや子どもも鉄不足になりやすくなります。
フェリチンの目安(目安値)
- 女の子:30ng/ml 以下で注意
- 男の子:50ng/ml 以下でも注意が必要

子どものこんな症状に要注意
子どもは「だるい」「つらい」と言葉で伝えるのが難しいため、まわりの大人が気づくことがとても大切です。
よく見られるサイン | 特徴や補足 |
---|---|
イライラしやすい | ちょっとしたことで怒ったり、気分の浮き沈みが激しい |
落ち着きがない | 集中力がなく、そわそわしていることが多い |
成長がゆっくり | 身長や体重の伸びが周囲より遅れていることがある |
気になる症状が続くようであれば、小児科でフェリチン値を調べてもらうのも一つの方法です。
思春期からは“本気”で鉄分対策を
思春期になると、月経やダイエットによる鉄分の減少が増えるため、特に女の子は注意が必要です。
鉄分は体内で作ることができないため、食事からの補給が基本。成長期の子どもには、バランスのとれた食生活を意識して取り組むことが大切です。

最後に
鉄分やたんぱく質が足りないと、体だけでなく心の調子も崩れてしまいます。そしてそれは、家族にも影響を与えてしまうことがあります。
でも、フェリチンなどの数値で「見える化」できる問題だからこそ、早めに対処することができるのです。
まずは、日々の食生活を少しずつ見直し、自分や家族の鉄分の状態に目を向けてみてくださいね。
