「健康診断で“溶血性貧血の疑い”と言われた」「赤血球が壊れるってどういうこと？」そんな不安や疑問を抱えている方も、少なくないのではないでしょうか。
溶血性貧血は、赤血球が本来の寿命より早く壊れてしまうことで起きる貧血の一種です。生まれつきの体質によるものもあれば、生活の中で起きる後天的な原因もあり、その背景はさまざまです。症状の出方や治療の方法も、それぞれ異なります。
この記事では、溶血性貧血について「先天性」と「後天性」に分けて原因を解説し、それぞれの症状や治療方法についてもわかりやすくご紹介します。読み終わるころには、自分や家族の状態をしっかり理解し、次に取るべき行動が見えてくるはずです。
溶血性貧血とは？
「溶血性貧血」とは、本来は約120日生きるはずの赤血球が、もっと早く壊れてしまうことで起きる貧血です。
赤血球は、酸素を体のすみずみまで運ぶ大切な細胞。その数が減ってしまうと酸素不足となり、さまざまな不調があらわれます。また、壊れた赤血球から出る「ビリルビン」という色素が体にたまることで、黄疸（肌や目が黄色くなる）などの症状が出ることもあります。
このように、「赤血球が壊れること＝溶血」が体にさまざまな影響を与えるのが、溶血性貧血の特徴です。
原因から見分ける2つのタイプ
溶血性貧血は大きく分けて、以下の2つのタイプがあります。
- 先天性（赤血球そのものに問題がある）
- 後天性（赤血球のまわりの環境に問題がある）
先天性の赤血球異常
生まれつき赤血球の性質に異常があるタイプで、次のような原因があります。
- 赤血球の膜に異常がある（例：遺伝性球状赤血球症）
- 赤血球内の酵素が不足している（例：G6PD欠乏症、PK欠乏症）
遺伝性球状赤血球症って？
通常の赤血球は、中央がくぼんだ円盤のような形をしていますが、この病気では赤血球が丸くなってしまいます。そのため、血管の中を通るときに壊れやすくなり、結果として貧血が起こります。
後天性の赤血球異常
生まれつきではなく、免疫や外部からの影響で赤血球が壊れやすくなるタイプです。
- 自己免疫性溶血性貧血：体の免疫が赤血球を“異物”とみなして壊してしまう
- 発作性夜間血色素尿症：夜間に赤血球が壊れて、朝の尿が濃い色になる
- 強いストレスや外的刺激によるもの：例）行軍血色素尿症、赤血球破砕症候群など
主な症状と体への影響
貧血に共通する症状
赤血球の数が減ると酸素が足りなくなり、次のような体調の変化が見られます。
- 息切れや動悸
- めまいや立ちくらみ
- 疲れやすい、体がだるい
- 頭痛や肩こり
- 髪のパサつきや抜け毛、肌の乾燥
溶血によって起こる特有の症状
赤血球が壊れたときに発生するビリルビンの増加によって、以下のような症状が現れることがあります。
- 白目や肌が黄色っぽくなる（黄疸）
- 尿の色が濃くなる（茶色っぽい色）
これらは、壊れた赤血球が急激に増えると、体が処理しきれなくなってしまうために起こります。
治療法の違いと方針
溶血性貧血の治療は、原因に合わせて大きく異なります。
先天性の場合の治療
- 酵素が足りない場合：有効な根本治療は今のところ確立されていません。体調管理が中心となります。
- 赤血球の膜に異常がある場合：赤血球を壊す働きのある脾臓を取り除く「脾臓摘出手術」が検討されることもあります。
後天性の場合の治療
- 自己免疫性溶血性貧血：体の免疫の過剰な反応を抑えるために、ステロイド（副腎皮質ホルモン）薬が使われます。
- 症状がいったん良くなっても、再発する可能性があるため、定期的な通院や経過観察が欠かせません。
まとめと次の行動
溶血性貧血は、「赤血球が壊れる」ことで起こる貧血です。原因は体質であることもあれば、免疫などの影響によることもあり、対処法はさまざまです。
おさえておきたいポイント
- 溶血性貧血は、赤血球の“破壊”が原因
- 先天性と後天性の2つのタイプがある
- 症状は「酸素不足による不調」と「黄疸」が主な特徴
- 原因に応じて、薬や手術などの治療が選ばれる
体が出している小さなサインに気づき、無理せず医師に相談することが、安心への第一歩です。自分やご家族の健康を守るために、正しい知識と対策を身につけていきましょう。
