「毎日意識して鉄分を摂っているのに、なんだか疲れやすい…」そんなふうに感じたことはありませんか?
鉄分不足は特に女性に多く見られ、食事だけでは補いきれないことも少なくありません。
そんな中、「鉄鍋で調理すると鉄分が摂れるらしい」という話を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
実際、鉄鍋を使うことで、鉄が食材に溶け出し、体内に吸収されやすい形で取り込まれる可能性があります。
本記事では、鉄鍋による鉄分補給の仕組みや実験データ、さらに効果的な使い方までを詳しくご紹介します。
日々の調理で健康的な生活を目指すヒントとして、ぜひ参考にしてみてくださいね。
鉄鍋で鉄分補給は可能?
フロン加工の調理器具に比べ、鉄製の鍋やフライパンは体内で吸収されやすい「二価鉄」が溶け出すため、鉄分補給に役立つとされています。特に鉄不足が気になる日本人女性にとって、調理器具から自然に鉄分が補えるのは嬉しいことですよね。
ここでは、鉄鍋による鉄分摂取が本当に効果的かどうか、詳しく見ていきましょう。
ひじきの鉄分が減った本当の理由
かつて、ひじきは「鉄分が豊富な食材」として知られていました。しかし現在では、その鉄分量が昔の約10分の1にまで減っているのです。
その背景には、製造過程で使用される釜の素材が関係していると考えられています。以前は鉄製の釜で調理されていたため、調理中に鉄が溶け出し、結果的にひじきの鉄分量が多くなっていたのです。しかし、現在ではステンレス製の釜に切り替わっており、鉄分が溶け出すことはほとんどなくなりました。
このように、調理器具の素材が食品の栄養価にまで影響を及ぼすことがわかりますね。

鉄鍋から溶け出す鉄の量とは?
では、鉄鍋を使うと実際にどれほどの鉄分が溶け出すのでしょうか?
ある実験では、鉄鍋に300mlの蒸留水を入れ、3分間沸騰させた結果、新品の鉄鍋からは1.64µg(0.00164mg)の鉄が溶け出したと報告されています(出典:Trace Nutrients Research 30:17−20(2013))。
また、鉄鍋の使用年数が長いほど鉄の溶出量は多くなり、加熱時間が長いほど、さらにその量が増える傾向にあることもわかっています。
1日に必要な鉄分の目安
私たちの体からは、毎日約1~1.5mgの鉄が失われています。仮に鉄鍋から溶け出した鉄分を100%吸収できたとしても、その量はわずか0.00164mgに過ぎません。
つまり、必要な鉄分を補うには600杯以上のお湯を飲まなければならないという計算になります。
一見すると「鉄鍋はあまり意味がないのでは?」と感じるかもしれませんが、実はある条件を整えることで、鉄の溶出量を大きく増やすことができるのです。
酸性の料理が鉄の溶出を高める
鉄は、酸性の環境下で溶けやすくなるという性質を持っています。
そのため、酢やケチャップ、トマトといった酸味のある調味料や食材と一緒に調理することで、鉄の溶出量が大幅にアップするのです。中には、鉄の溶出量が1000倍に達したというデータもあるほどです。
料理に少し工夫を加えるだけで、鉄鍋のメリットをより一層引き出すことができるのですね。
鉄の吸収率を高める工夫
鉄分の吸収率は、体の鉄状態や食事の内容によって大きく変わります。特に鉄不足の状態にあるときには、非ヘム鉄の吸収率が高まり、50%を超えることもあるとされています。
鉄の吸収に関する詳しいメカニズムや、体内ホルモン「ヘプシジン」の影響については、以下の記事もあわせてご確認ください。

鉄鍋を効果的に使うコツ
鉄鍋を使って調理する際には、酸性の食材や調味料(酢・ケチャップ・トマトなど)を加えることで、鉄分の溶出量を効果的に増やすことができます。
また、使用頻度が高くなるほど鉄鍋の表面が酸化しやすくなり、結果的に鉄の溶出が促進される傾向にあります。
ただし、鉄鍋は錆びやすいため、調理後は水気をしっかりと拭き取り、油を薄く塗って保存するなど、適切なお手入れが必要です。
まとめ
鉄鍋から溶け出す鉄分は微量に見えるかもしれませんが、調理法を工夫することで、日々の食事から鉄分を自然に摂取できる手段として活用できます。
鉄分不足が気になる方は、鉄鍋と酸性調味料を上手に組み合わせることで、鉄分補給の一助になるはずです。
さらに詳しい情報を知りたい方は、以下の記事もぜひご覧ください。

