「朝起きた瞬間から体がだるい」
「通勤中に立っていられず、ふらつくことがある」
──そんな日常の不調、もしかすると“鉄分不足”が原因かもしれません。
鉄分を多く含む食べ物を調べてみても、「含有量が多い」という情報だけでは十分とはいえません。実は、水分量や吸収率といった見落としがちな要素が、鉄分の摂取効率を大きく左右します。
本記事では、鉄分が多い食べ物を正しく見分ける2つのポイントを中心に、鉄分不足の原因別対策も交えてわかりやすく解説します。
読み終える頃には、自分の体調に合った鉄分の摂り方が見えてくるはずです。
鉄分不足の原因を見極めよう
鉄分を効率よく補いたいとき、まず大切なのは「なぜ鉄分が不足しているのか」という原因を正しく把握することです。
鉄分不足には大きく分けて、以下の2つのタイプがあります。
ケース1:貯蔵鉄が枯渇していくタイプ
女性に多く見られるのがこのタイプです。生理や子宮筋腫などによる出血により、体内の鉄分が徐々に失われていきます。
このとき最初に減っていくのは、血液中の鉄ではなく「貯蔵鉄(フェリチン)」と呼ばれる、肝臓などに蓄えられている鉄です。
そのため、ヘモグロビンの数値が正常でも、鉄分不足が進行しているケースは少なくありません。

ケース2:鉄が体内でうまく使われないタイプ
このタイプでは、体内に貯蔵鉄はあるにもかかわらず、血液中に鉄が“出回らない”ために貧血状態になります。
原因として多いのが、体内の炎症によって鉄の代謝調整ホルモン「ヘプシジン」が過剰に働き、鉄の利用が妨げられてしまうことです。
このような状態では、鉄を多く含む食材を摂っても効果が出にくく、まずは炎症やストレスなどの原因を整えることが重要です。

鉄分が多い食べ物を見分ける2つのポイント
次に、実際に食材を選ぶ際に押さえておきたい2つの重要な視点をご紹介します。
ここで解説する内容は、「貯蔵鉄が枯渇するタイプ」の鉄分不足を前提としています。
1. 水分量を除いた鉄分量で比較する
食品中の鉄分量は「100gあたり」で示されることが多いですが、この数値は水分量によって大きく左右されます。
たとえば、乾燥しているバジルの鉄分量は非常に高く、水分を多く含む野菜類は低く見えがちです。
レバーと小松菜の鉄分量は実は同じ!?
「鉄分豊富」とされるレバーも、水分を除いた「固形分」で見ると、意外にも小松菜と大きな差はありません。
▼水分を含む状態(mg/100g)
- バジル:120.0
- アユ焼き(内臓):63.2
- 豚レバー:13.0
- パセリ:7.5
- 小松菜:2.8
▼水分を除いた場合(mg/100g固形分)
- アユ焼き(内臓):152.7
- バジル:134.7
- パセリ:49.0
- 小松菜:47.4
- 豚レバー:46.4
見た目の印象と実際の含有量には、大きなギャップがあることがわかります。
2. 鉄の吸収率の違いを理解する
鉄分には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があります。
種類 | 吸収率 | 含まれる食品 |
---|---|---|
ヘム鉄 | 約15〜25% | 肉・魚・貝類 |
非ヘム鉄 | 約2〜5% | 野菜・豆類・穀物 |
一般的にはヘム鉄の吸収率が高いですが、体内の鉄が極端に不足している場合には、非ヘム鉄の吸収も高まることがあります。
そのため、鉄分を“予防的に補う”場合はヘム鉄を、“不足を改善したい”場合は非ヘム鉄も積極的に活用するとよいでしょう。

鉄分の多い食べ物の特徴
ここでは、水分量や吸収率も踏まえたうえで、鉄分が豊富な食材をカテゴリ別にご紹介します。
肉類
赤身が多い肉(例:馬肉、牛赤身)は鉄分が豊富で、吸収率も高いのが特長です。
魚介類
天然アユの内臓などは、特に高濃度の鉄を含んでいます。焼きアユ(内臓含む)では、100g中63.2mgという数値が確認されています。
貝類
しじみやあさりなどの白っぽい貝には非ヘム鉄が、赤貝のように赤みの強い貝にはヘム鉄が多く含まれています。
まとめ|目的別に鉄分を選ぶことが大切
鉄分を多く摂りたいときには、以下の3点を意識することで、より効果的な食材選びが可能になります。
- 鉄分不足のタイプ(原因)を見極めること
- 水分を除いた鉄分量で比較すること
- 目的に応じて、ヘム鉄・非ヘム鉄を使い分けること
鉄分は「数値」だけで判断せず、体調やライフスタイルに合わせて柔軟に取り入れていくことが大切です。
