鉄分を摂りすぎるとどうなる?鉄過剰症の原因・症状・リスクと対策を徹底解説
鉄過剰症って聞いたことありますか?
「鉄分は体にいいから、たくさん摂ったほうがいい」と思っていませんか?
たしかに、鉄は貧血予防や体のエネルギーづくりに欠かせない栄養素です。でも実は、“摂りすぎ”にも注意が必要なケースがあるんです。
この記事では、「鉄過剰症(てつかじょうしょう)」と呼ばれる状態について、原因や症状、気をつけたいことをわかりやすくまとめました。
足りないことばかりに目が行きがちですが、「摂りすぎによるリスク」もきちんと知っておくことで、自分に合った安心の鉄分ケアができるようになりますよ。
鉄過剰症とは?体にどんな影響があるの?
鉄過剰症とは、体に必要以上の鉄がたまってしまい、内臓などに負担がかかる状態のことです。特に、「自由鉄(たんぱく質と結びついていない鉄)」が増えると、体の中で“サビ”のような酸化ストレスが発生しやすくなり、肝臓や心臓などにダメージを与える可能性があります。
ふつうの食事では、鉄過剰になることはほとんどありませんが、
- 鉄剤の静脈注射を受けている
- サプリを長期的に多量に摂っている
- 鉄をうまく代謝できない病気がある
などの場合は注意が必要です。
鉄ってそもそもどんな働きをするの?
鉄過剰症を正しく理解するために、まずは鉄が体でどんな役割をしているかを見てみましょう。
ヘム鉄と非ヘム鉄の違いって?
鉄には2種類あります。
- ヘム鉄(動物性食品に多い):体に吸収されやすい
- 非ヘム鉄(植物性食品に多い):吸収率が低め
吸収率はヘム鉄が10〜20%、非ヘム鉄は1〜5%ほどといわれています。この違いは、鉄補給の効率にも影響します。
鉄はどこにある?
健康な成人の体にはおよそ3,000〜4,000mgの鉄があり、
- 約2/3は赤血球のヘモグロビン
- 残りは肝臓や脾臓に「貯蔵鉄」としてストック
エネルギーを作る代謝や、神経の伝達にも関わる、体にとってとても大切なミネラルです。
鉄過剰症を引き起こす主な原因
1. 静脈注射での鉄剤投与
もっとも注意が必要なのが「鉄剤の静脈注射」。この方法では、鉄が血液中に直接入るため、たんぱく質と結合する前に“自由鉄”として体内に増えてしまいます。
その結果、活性酸素(サビのもと)が発生しやすくなり、肝臓や心臓にダメージを与える可能性があるのです。
2. サプリや食事での摂りすぎでは?
ふつうの食事やサプリメントで鉄を摂っても、体が必要な分だけ吸収し、余分は排出する仕組みがあるため、基本的には心配ありません。
ただし、もともと鉄が足りている人が、長期的にサプリを飲み続けると、少しずつ蓄積してしまうこともあります。
「たんぱく質と結合していれば無害」って本当?
体の中の鉄は、多くがトランスフェリンやフェリチンというたんぱく質とセットで存在しています。この状態なら、鉄は安定していて体にも害を与えません。
一方、「自由鉄(たんぱく質と結びついていない鉄)」は非常に不安定で、酸化ストレスを引き起こす原因になります。
だからこそ、体は鉄の吸収や排出をうまくコントロールして、バランスを保っているのです。
鉄過剰に気をつけたい人とは?
こんな方は、鉄過剰症に注意が必要です。
- 鉄剤の静脈注射を何度も受けている
- 十分に鉄が足りているのに、サプリを毎日続けている
- 再生不良性貧血やMDSなどで、定期的な輸血が必要な人
こうした状況では、医師の管理のもとで鉄の状態をチェックしていくことが重要です。
ちなみに、ふつうの日本人の食事では鉄の摂りすぎはめったに起こりません。むしろ、日本人女性の約99%がフェリチン100未満(欧米基準での鉄不足)というデータもあり、「足りないこと」が課題になっているのが現状です。

まとめ:鉄は「摂りすぎ」より「足りているか」が大事
鉄過剰症は、主に医療的な処置や特定の病気が原因で起こるケースが中心です。日常の生活や食事で過剰になることはごくまれですが、特定の条件がそろうと注意が必要です。
とはいえ、現代の日本ではむしろ鉄不足のほうが深刻な問題になっていて、とくに女性や妊娠中の方には意識的な鉄の補給がすすめられています。
大切なのは、「今の自分に鉄が足りているか?」を見きわめること。必要に応じて医療機関で検査を受けたり、信頼できる情報を参考にしながら、バランスのよい栄養管理を心がけましょう。


参考文献
- 「うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった」藤川徳美著 光文社新書