「せっかく鉄分を摂っても、お茶と一緒に飲んだら意味がないのでは……」と心配して、お茶を控えるようになった方もいらっしゃるのではないでしょうか。特に、貧血が気になる方や健康を意識している女性にとっては、気になる話題ですよね。
ところが近年の研究では、「お茶に含まれるタンニンが鉄分の吸収を妨げる」という従来の考え方が、必ずしも正しくないことがわかってきました。
この記事では、お茶と鉄分吸収の関係、タンニンの性質、そして最新研究から見えてきた“本当のところ”をやさしく解説します。読み終える頃には、お茶の見方が少し変わっているかもしれません。
昔の常識は正しかった?お茶が鉄分吸収を妨げると言われた背景
「お茶=鉄の吸収を妨げる」とされていた理由
緑茶や紅茶を食事と一緒に飲むと、鉄の吸収が悪くなるという説は、長年信じられてきました。これは、お茶に含まれる「タンニン」という成分が鉄と結びつき、体内への吸収を妨げると考えられていたからです。
タンニンが含まれる飲み物・食品の代表例
では、具体的にどのような飲み物や食品にタンニンが含まれているのでしょうか?
タンニンは、お茶のほかにも赤ワインやコーヒー、柿など、渋みのある食品や飲み物に含まれています。私たちが感じるその渋みこそが、タンニンが存在しているサインなのです。
タンニンの働きとは?鉄との結合で吸収が落ちる仕組みを解説
タンニンが鉄と結びつくメカニズム
タンニンには、たんぱく質や金属イオン、特に鉄と強く結合する性質があります。そのため、鉄と結びつくことで水に溶けにくい化合物を作り、結果として鉄の吸収が妨げられるのです。
実際、ある研究(Hallbergら 1989年)では、鉄強化米を紅茶と一緒に摂取した場合、鉄の吸収率が約49%も低下したと報告されています。
ただし、この結果はすべての条件に当てはまるわけではなく、個人の体調や栄養状態によって影響の程度は異なることが示唆されています。
実はもう誤解?「お茶=貧血に悪い」は今では否定されている
最新研究が示す、お茶と鉄剤吸収の意外な関係
最近の研究では、鉄剤を水で飲んだ場合とお茶で飲んだ場合とで、吸収率にほとんど違いがなかったという結果もあります。
これは、体が鉄不足の状態にあると、自然と吸収率を高める働きが起こるためだと考えられています。つまり、タンニンによる影響があっても、体がある程度その影響をカバーしてくれるというわけです。
鉄分不足のとき、体はどう対応するのか?
体が自然に鉄の吸収を高める仕組み
鉄分が不足していると、腸では鉄の吸収を促す因子が活性化します。その結果、普段よりも効率よく鉄を吸収できるようになります。
このように、タンニンの影響も体の調整機能によって相対的に小さくなるのです。

まとめ:お茶を楽しみながら鉄も摂るには?
- お茶に含まれるタンニンは、確かに鉄の吸収を妨げる性質がある
- しかし、鉄不足時には体が吸収を高める仕組みを備えている
- 現在では「お茶=鉄に悪い」は見直されつつある
つまり、お茶を楽しむことと鉄をしっかり摂ることは、両立できるのです。食事のタイミングや内容を少し工夫しながら、自分に合ったスタイルで健康を保ちましょう。
鉄分の上手な摂り方や貧血対策については、以下の記事もぜひご参考ください。

