「鉄分はちゃんと摂っているのに、なぜか疲れが取れない…」そんなお悩みをお持ちの方は、「巨赤芽球性貧血」という少し違ったタイプの貧血が関係しているかもしれません。
これは、ビタミンB12や葉酸といった特定の栄養素が不足することで起こる貧血のひとつです。特に女性や高齢の方、妊娠中の方に見られやすいのが特徴ですが、正しく知っておけば予防や改善も可能です。
この記事では、巨赤芽球性貧血の原因を中心に、症状や治療法、そして日常生活でできる予防の工夫まで、わかりやすくご紹介します。ぜひ最後までお付き合いください。
巨赤芽球性貧血とは?
私たちの体に酸素を運ぶ「赤血球」。この赤血球がうまく作れなくなると貧血になりますが、中でも「巨赤芽球性貧血」はビタミンB12や葉酸が足りないことで起こるタイプです。
赤血球のもとになる細胞(赤芽球)は、DNAが正しく作られないと大きくなりすぎてしまい、成熟できずに壊れてしまいます。これが「無効造血」と呼ばれる状態です。
巨赤芽球性貧血はビタミンB12または葉酸の欠乏、薬剤などにより赤芽球をはじめとする造血細胞のDNA合成障害を病因とする一連の症候群の総称である。この状態で発生した血球は正常に成熟する事ができず、骨髄内でアポトーシスを起こし破壊され、無効造血が起きる。
引用:「臨床と検査-病態へのアプローチ-(VOL.40)」
主な原因と発症のしくみ
巨赤芽球性貧血の原因は大きく3つありますが、日常生活に関わりが深いのは以下の2つです。
- ビタミンB12の不足
- 葉酸の不足
抗がん剤などの薬によっても起こることはありますが、今回は特に身近な栄養素不足について詳しく見ていきます。
ビタミンB12が不足する理由
吸収に必要な「内因子」の存在
ビタミンB12は、肉や魚などに含まれる栄養素ですが、体に吸収されるには「内因子」という物質が必要です。これは胃から分泌されるもので、これが不足していると、B12をいくら摂っても吸収されません。
胃の状態による影響
- 胃の手術を受けた方は、内因子が作られなくなり吸収できなくなります。
- 「萎縮性胃炎」は高齢の方に多く見られ、ビタミンB12の吸収を妨げることがあります。この状態が進むと「悪性貧血」と呼ばれることもあります。
ビタミンB12が足りないとどうなる?
- 舌の表面がツルツルして痛む「ハンター舌炎」
- 足のしびれや白髪といった神経の症状
以前は治療が難しく「悪性」とされていましたが、現在はビタミンB12の注射によって治療可能な病気となっています。
葉酸が不足する理由
妊娠中の方にとって特に大切な葉酸は、他の人にとっても欠かせない栄養素です。不足の原因には、以下のようなものがあります。
偏った食生活
- 葉酸は緑黄色野菜に多く含まれます。
- 外食が多い方や、野菜が不足しがちな方は注意が必要です。
妊娠やアルコールの影響
- 妊娠中は葉酸の必要量が増えるため、不足しやすくなります。
- アルコールのとりすぎも吸収を妨げる原因になります。
葉酸のとりすぎにも注意
葉酸は不足だけでなく、過剰摂取にも注意が必要です。過敏症や睡眠障害、喘息のリスクが報告されており、以下のように耐容上限量が引き下げられています。サプリメントを利用する場合は摂取量に気をつけましょう。
2010年[27µg/kg 体重/日]
↓
2015年[18µg/kg 体重/日] ※共に女性引用:「厚生労働省 日本人の食事摂取基準」(2010年 / 2014年)
症状と進行のしくみ
ビタミンB12や葉酸が不足すると、赤血球がうまく作れなくなり、以下のような症状が出てきます。
- なんとなく疲れやすい
- めまいや立ちくらみがある
- 息切れや動悸がする
これらは体内で酸素を運ぶ力が弱くなることで起こります。気になる症状が続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
治療法と生活でできること
ビタミンB12の補充
- 内因子が足りない場合は、注射で直接ビタミンB12を補うのが効果的です。
- サプリメントでも摂取できますが、吸収率を考えると医師と相談しながらの治療が安心です。
葉酸の補充と食生活の見直し
- 葉酸はサプリメントや薬で補うことができます。
- 食事の中で野菜を意識的に摂ることも、根本的な改善につながります。
まとめと次に読むべき記事
巨赤芽球性貧血は、ビタミンB12や葉酸といった栄養素の不足が原因で起こる貧血です。胃の病気や妊娠、偏った食生活など、私たちの生活習慣が深く関係しています。
適切に栄養を補えば改善が期待できる病気ですので、疲れやすさなどのサインを感じたら放っておかず、体の声に耳を傾けてみてください。
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