「しっかり寝たはずなのに、朝から体が重い」
「階段を上るだけで動悸がするし、最近は肌荒れもひどい…」
こうした不調を感じながら、「忙しいから」「年齢のせいだから」と諦めていませんか?
こうした不調の背景にはさまざまな要因が考えられ、症状のみから特定の原因を判断することはできませんが、その一因として、鉄不足が関与している場合もあります。 特に月経のある女性は、出血により鉄が失われやすい傾向があります。鉄不足は初期には自覚症状が乏しいことも多いため、日常の食事の中で意識して補うことが重要です。
この記事では、あなたの体調管理に役立つ「鉄分補給の基本」を、最新データに基づいて、分かりやすく解説します!
成人女性で指摘されている「鉄分不足」

なぜ、十分に食事をとっているつもりでも不調を感じることがあるのでしょうか?不調の背景にはさまざまな要因がありますが、その一つとして、推奨量と実際の摂取量との間に差があることが指摘されています。
月経による鉄の喪失と食事からの補給
厚生労働省が公表している**「日本人の食事摂取基準(2025年版)」**では、
月経のある成人女性では、1日あたり約10~10.5 mgの鉄の摂取が推奨されています。
(※30~64歳の女性では10.5 mg)※1
一方で、国民健康・栄養調査によると、現代女性の鉄の平均摂取量は約6.5 mg程度にとどまっていると報告されています。 ※2
個人差はあるものの、平均値としては推奨量に対して数mg程度の差がみられます。
鉄不足と酸素運搬の関係
なぜ、鉄分が足りないと体のだるさを感じることがあるのでしょうか。その背景の一つとして、鉄不足により酸素を運ぶ働きが低下することがあります。
鉄は、赤血球中のヘモグロビン(酸素を運搬するタンパク質)の構成に必要な成分です。
毎月の月経などによって鉄が失われ、鉄不足が進行すると、ヘモグロビンの合成に影響を及ぼすことがあります。その結果、酸素の運搬機能の低下につながり、さまざまな症状として現れることがあります。
例えば、「寝ても寝ても眠い」「階段を少し上るだけで心臓がバクバクする」「集中力が続かない」といった症状は、鉄不足でみられることがあります。ただし、これらの症状は他の原因でも生じるため、症状のみで判断することはできません。鉄の摂取不足が続くと、体調に影響を及ぼす可能性があるため、日常的な栄養バランスを見直すことが重要です。
鉄不足に伴ってみられることがある主な症状

以下のような症状は、鉄不足でみられることがあります。(ただし、いずれも特異的な所見ではなく、他の原因でも生じるため、症状のみで判断することはできません。)
- 爪が割れやすくなる、まれにスプーン状に反る(スプーンネイル)
- 氷を無性に食べたくなる(氷食症:鉄欠乏でみられることがある異食症の一種)
- 夕方から夜にかけて、足がむずむずして落ち着かない(むずむず脚症候群:鉄不足が関与あると報告されています)
- まぶたの裏が白く見える(結膜蒼白)
鉄分の吸収率という重要なポイント

鉄分対策では、摂取と同じくらい重要なのが、「体内への吸収率」です。実は、鉄分はその種類によって、吸収効率に大きな差があります。
ヘム鉄(動物性):非ヘム鉄に比べて吸収率が高い

- 含まれる食材: レバー、赤身肉、カツオ、あさりなど
- 吸収率: 一般な目安として約15〜20%程度とされています ※3
- 特徴: 比較的効率よく吸収されやすく、他の食品の影響を受けにくいとされていますが、食事全体の影響は一定程度受けます。
非ヘム鉄(主に植物性食品に多い):ヘム鉄に比べて吸収率が低い

- 含まれる食材: 小松菜、ほうれん草、納豆、卵など
- 吸収率: 一般的な目安として約2〜10%とされています ※3
- 特徴: 単体では吸収率が低いとされています。しかし、「ビタミンC」や有機酸(リンゴ酸・クエン酸など) と一緒に摂ることで、吸収を促進することが知られています。※4
【日本人の鉄摂取の特徴重要】日本人の摂取バランスは「非ヘム鉄」が多い傾向にある
ここが見落とされがちなポイントです。実は、私たちが日々の食事から摂取している鉄分の多くは、吸収率の低い「非ヘム鉄」が占めるとされています。
日常的な食事では、吸収率の低い種類の鉄が多く含まれる傾向があります。そのため、単に「鉄分の多いもの」を食べるだけでなく、吸収効率を意識した食事の工夫が大切です。
鉄分を多く含む食品(含有量の目安)

鉄分を多く含む食品の例(100gあたりの含有量の目安)
日本食品標準成分表(八訂)に基づき、鉄分を多く含む代表的な食品を示します。※5 なお、本一覧は含有量ベースの参考値であり、実際に体内へ吸収される量は、鉄の種類(ヘム鉄・非ヘム鉄)や食事内容、調理方法などによって異なるため、あくまで目安として参考にしてください。
| 順位 | 食材名 | 鉄分量 (mg/100g) | 鉄の種類 | 特徴・アドバイス |
| 1位 | 豚レバー | 13.0 | ヘム鉄 | 鉄分含有量が高い食品ですが、摂取量や頻度に配慮し、過剰摂取には注意が必要。 |
| 2位 | あさり水煮缶 | 12.6 | ヘム鉄 | 缶詰のため調理の手間が少なく、日常的に取り入れやすい食品。汁にも鉄分が含まれるため、料理に活用することで鉄分摂取の一助となる。ただし、加工食品のため、製品によって含有量に差があり。 |
| 3位 | しじみ | 8.3 | ヘム鉄 | 小粒ながら鉄分を含む食品で、日常の食事に取り入れやすい点が特徴。冷凍保存により成分の利用効率が高まる可能性があるとされている。 |
| 4位 | 牛レバー | 4.0 | ヘム鉄 | 鉄分を多く含む食品の一つで、比較的吸収されやすい鉄(ヘム鉄)を含む。一方で、ビタミンAも多く含まれるため、摂取量や頻度には注意が必要。 |
| 5位 | 納豆 | 3.3 | 非ヘム鉄 | 日常的に取り入れやすい食品の一つ。 非ヘム鉄を含むため、ビタミンCを含む食品と組み合わせることで吸収が促進されることが知られている。 |
| 6位 | 小松菜 | 2.8 | 非ヘム鉄 | 鉄分を含む野菜の一つで、日常の食事に取り入れやすい食品。非ヘム鉄を含むため、ビタミンCを含む食品と組み合わせることで、鉄の吸収が促進されることが知られている。 |
| 7位 | 牛赤身肉 | 2.8 | ヘム鉄 | ヘム鉄を含み、効率よく鉄分を補給できる食品の一つ。たんぱく質も同時に摂取でき、栄養バランスの観点からも取り入れやすい食材。 |
| 8位 | 厚揚げ | 2.6 | 非ヘム鉄 | 非ヘム鉄を含む大豆製品で、日常的に取り入れやすい食品。たんぱく質も含まれており、食事の一品として活用しやすい特徴がある。 |
| 9位 | 枝豆(冷凍) | 2.5 | 非ヘム鉄 | 非ヘム鉄を含む食品で、手軽に取り入れやすい点が特徴。冷凍食品としても利用しやすく、日常の食事に無理なく取り入れることができる。 |
| 10位 | カツオ | 1.9 | ヘム鉄 | ヘム鉄を含む食品で、効率よく鉄分を補給できる食材の一つ。比較的取り入れやすく、日常の食事に組み込みやすい特徴あり。 |
※食品中の鉄含有量が多くても、実際に体内に吸収される量は吸収率や食事の組み合わせによって大きく異なります。本ランキングはあくまで参考として、食事全体のバランスと併せて活用することが重要です。
鉄分摂取のための実践的なポイント

鉄分が不足しやすい状況を踏まえ、日常生活で取り入れやすい工夫を紹介します。
① 「ひじき」の鉄分量に関する注意点

かつて鉄分が豊富とされていたひじきですが、現在は鉄釜でなくステンレス釜での加工が主流となっており、従来と比べて鉄分量が減少しているとされています。加工方法の違いにより、一部では約1/9程度まで低下したとする報告もあります。※6
ひじき自体が栄養価の低い食品というわけではありませんが、鉄分補給を目的とする場合は、大豆やあさりなど他の鉄分を含む食品と組み合わせて取り入れることが有用です。
② 鉄の吸収と飲み物の関係(コーヒー・お茶に注意)

コーヒーや緑茶に含まれるポリフェノール(タンニンなど)は、腸管内で鉄と結合し、不溶性の複合体を形成することで、主に非ヘム鉄の吸収を低下させることが報告されています。
そのため、鉄を含む食事と同時、または食後すぐの摂取は控え、時間をあけるなどの工夫が有用とされています。※7 過度に制限する必要はありませんが、食事との同時摂取を避けるなどの工夫が有用です。また食事中や食後は、比較的影響の少ない飲み物(麦茶や水など)を選ぶとよいでしょう。
③ 非ヘム鉄の吸収を助ける食事の工夫

非ヘム鉄の吸収を助ける成分として、ビタミンCやリンゴ酸・ クエン酸などの有機酸があります。
- ビタミンCの役割: 鉄分を溶けやすい形に保ち、小腸での吸収を促進することが知られています。
- 有機酸の役割: 鉄と結合して吸収されやすい状態(キレート)を形成することで、吸収を助けるとされています。
小松菜などの野菜を摂る際は、ビタミンCと有機酸が豊富なキウイ、イチゴ、レモンなどの果物を組み合わせることで、鉄分補給の効率の向上が期待できます。
今日から始める鉄分摂取の工夫

鉄分不足の改善は、短期間で大きく変化するものではありませんが、食生活を少し意識することで、鉄分摂取を増やすことは可能です。
たとえば、
- 休日: レバーや牛ステーキ、カツオなどの食品から、吸収率の高い「ヘム鉄」を取り入れることも一つの方法です。
- 平日: 納豆、小松菜、あさり缶などを意識的に取り入れ、忙しい朝や食欲がない時は、いつもの食事に果物を組み合わせるなどの工夫も有用です。
不調を「当たり前」として見過ごさないことも重要です。食生活を見直し、無理のない範囲で鉄分摂取を意識することが重要です。
症状が続く場合や強い不調がある場合には、自己判断せず医療機関での評価を受けることが重要です。
執筆・監修:山本佳奈医師
鉄は、不足していても自覚しにくい栄養素の一つであり、特定の食品のみで改善できるものではなく、食事全体のバランスの中で継続的に意識することが重要です。
特に月経のある女性では鉄が失われやすい一方で、食事内容や体調によっては男女を問わず不足することがあります。
鉄分は摂取量だけでなく、吸収率や食事の組み合わせによって体内への取り込み量が変化するため、単一の食品に偏るのではなく、食事全体のバランスを踏まえて継続的に取り入れることが重要です。
症状がある場合には鉄不足以外の原因も考えられるため、自己判断は避け、医療機関での適切な評価を受けることが重要です。
※監修は本文の一般的な医学情報に限られます。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。内科医。日本医師会認定産業医。一般社団法人 日本貧血改善協会 理事として、貧血に関する啓発・記事監修・教育活動に携わっている。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)。
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参照元(出典)リスト
※1 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)より
※2 厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査」より
※3 吸収率の数値について
出典:国立がん研究センター 東病院 CHEER 貧血があるときの食事アドバイス
※4 吸収を助ける成分について
出典:日本調理科学会誌 Vol. 47,No. 4,195~201(2014)〔総説〕
※5 各食材の鉄分含有量について
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
※6 ひじきの鉄分減少について
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(七訂)2015年版」での改訂
※7 タンニンの影響について
出典:The mechanism of the inhibition of iron absorption by tea

