「最近の健康診断でヘモグロビン値が低いと言われたけれど、具体的にどうすればいいかわからない」 「再検査が必要なのか、まずは食事を見直せばよいのか知りたい」
このような不安を感じていませんか?
ヘモグロビン値は、貧血の有無を考えるうえで最も重要な指標のひとつです。ただし、数値だけで原因や対応が決まるわけではなく、症状や体の状態、背景を含めて総合的に判断する必要があります。
この記事では、世界保健機関(WHO)の基準を参考にしたヘモグロビン値の目安とともに、数値から考えられるリスクの考え方や、どのような場合に医療機関の受診を検討すべきかについて解説します。ご自身の検査結果をどう受け止め、次に何をすればよいのかを考えるヒントとして、参考になれば幸いです。
ヘモグロビン値の基準はWHO(世界保健機関)の数値を参照する

ヘモグロビン値の基準は、年齢や性別によって異なります。 ここでは世界保健機関(WHO)が示している、貧血を考える際の目安となる基準値(正常下限値)を解説します。
6カ月~15歳未満は年齢により11.0~12.0g/dl未満が基準
成長期にある子どもは、年齢区分によって以下の数値未満の場合、貧血が疑われる目安とされています。
成長や体格の変化に伴い、必要な酸素量や造血のバランスが変わるため、年齢別に基準が設定されています。
- 6カ月~4.99歳:11.0g/dl未満
- 5歳~11.99歳:11.5g/dl未満
- 12歳~14.99歳:12.0g/dl未満
15歳以上の女性は12.0g/dl未満(妊婦は11.0g/dl未満)
成人女性の場合、妊娠の有無によって基準が異なります。特に、生理のある女性は鉄分が不足しやすく、貧血をきたしやすいため、定期的にヘモグロビン値の確認が重要です。
- 妊娠していない場合:12.0g/dl未満
- 妊娠中の場合:11.0g/dl未満
15歳以上の男性は13.0g/dl未満
男性は、女性に比べて筋肉量が多く、身体が必要とする酸素も多いため、基準値が高く設定されています。
これらの基準値を下回る場合には、貧血が疑われるため、症状の有無や経過に応じて医療機関での評価が勧められます。
- 男性(15歳以上):13.0g/dl未満
血液検査表では「Hb」「HGB」「血色素量」の項目を確認する

健康診断の結果表を見る際は、必ずしも「ヘモグロビン」と書かれているとは限りません。多くの場合、以下のいずれかの名称で記載されています。これらはいずれも、血液中のヘモグロビン量を示す項目です。
- Hb:Hemoglobin(国際的に最も一般的)
- HGB:Hemoglobin(主に英語圏・機器表記)
- 血色素量:日本の健診・紙媒体でよく使われる表記
数値を正しく理解するためにも、次にヘモグロビンが体内で果たしている役割について解説します。
ヘモグロビンの役割は「全身への酸素運搬」である

ヘモグロビンは、赤血球の中に含まれるタンパク質で、肺で取り込んだ酸素を全身の臓器や組織へ運ぶ役割を担っています。 血液は「血漿(けっしょう)」と「血球(けっきゅう)」から成り立ち、その血球の大部分を占める赤血球の内部にヘモグロビンが存在しています。
血液が赤いのはヘモグロビンに含まれる鉄の働き
人間の血液が赤く見えるのは、ヘモグロビンに含まれる鉄が酸素と結合する性質を持っているためです。 この働きによって、体内に酸素が効率よく運ばれ、私たちの呼吸や代謝といった生命活動が支えられています。
貧血とはヘモグロビン量が基準値を下回り、酸素運搬能力が低下した状態

貧血とは、血液中のヘモグロビン量が基準値を下回った状態を指します。 単に血が薄いというだけでなく、全身への酸素の運搬が十分に行われにくくなっている状態を意味します。原因によっていくつかの種類に分かれ、それぞれ対処法が異なります。
最も多い原因は鉄分不足による「鉄欠乏性貧血」
ヘモグロビンの材料である鉄分が不足することで起こる貧血です。 貧血の中で最も多く、特に女性の場合は、生理や妊娠・授乳によって鉄分を失いやすく注意が必要です。治療は原因や重症度によって異なりますが、多くの場合、医療機関での評価のうえで鉄剤による補給が行われます。
ただし、背景に出血や吸収障害などの原因が隠れていることもあるため、自己判断せず医療機関での確認が重要です。
ビタミン不足や骨髄異常など鉄分以外が原因の貧血もある
貧血は鉄分不足だけで起こるわけではありません。以下のように、原因によっていくつかのタイプがあります。
- 巨赤芽球性貧血(ビタミンB12・葉酸不足)
ビタミンB12や葉酸が不足することで、赤血球のDNA合成が障害され、正常な造血が行われなくなる貧血です。胃や腸の手術歴がある人や、自己免疫性胃炎のある人、アルコール摂取量が多い人では、これらのビタミンが不足しやすくなります。治療には、ビタミン補充が必要になります。 - 再生不良性貧血(骨髄の機能障害)
骨髄の働きが低下し、赤血球だけでなく白血球や血小板も十分に作られなくなる病気です。そのため、感染症しやすくなったり、出血しやすくなったりします。多くは原因不明であり、厚生労働省の難病指定疾患の一つに含まれています。 - 溶血性貧血(赤血球の破壊)
赤血球が通常よりも早く破壊されることで起こる貧血です。皮膚や白目が黄色くなる黄疸や、尿の色が濃くなるといった症状がみられることがあります。原因に応じて薬物治療などの治療が行われます。 - 慢性疾患に伴う貧血(炎症・感染・腫瘍など)
慢性的な炎症や感染症、悪性腫瘍などがあると、鉄が十分にあっても体内でうまく利用されず、貧血をきたすことがあります。このタイプの貧血では、原因となっている基礎疾患の治療が重要になります。
ヘモグロビン低下により動悸・倦怠感・めまいなどの症状が現れる

ヘモグロビンが不足すると、全身への酸素の運搬が十分に行われにくくなり、次のような症状がみられることがあります。
- 動悸・息切れ
- 疲れやすい・倦怠感
- 集中力の低下
- めまい・立ちくらみ
- 顔色の悪さ(蒼白・黄みがかる)
酸素不足は、身体的な不調だけでなく、気分の落ち込みや集中力の低下といった精神面にも影響することがあります。こうした症状が続く場合には、早めに医療機関で相談することが大切です。
ヘモグロビン値が高い場合は血栓リスクが指摘されることがある

ヘモグロビン値が低すぎる場合だけでなく、高い状態が持続する場合にも注意が必要です。一部の病気が背景にある場合には、血液の粘稠度が高まり、血栓ができやすくなることがあります。 ヘモグロビン値が高い状態が続く場合には、医師の判断のもとで原因を確認することが大切です。
ヘモグロビン値が高くなる背景にはさまざまな要因がある
ヘモグロビン値が高くなる主な原因には、次のようなものがあります。
- 病的な原因:
・多血症(真性多血症など) - 一時的・相対的な原因:
・脱水
・喫煙
・高地環境
・一時的なストレスや運動後
とくに多血症が疑われる場合には、血液内科など専門医による評価と治療が必要になります。一方で、喫煙や脱水などが原因と考えられる場合には、水分摂取や生活習慣の見直しによって改善することもあります。
【数値別】ヘモグロビン値に応じた3段階の対処法

ヘモグロビン値は、体の状態を知るためのひとつの目安です。実際の対応は、数値だけでなく、症状や原因、持病の有無などを踏まえて総合的に判断されます。以下は、一般的な目安として参考にしてください。
11~10g/dl(軽度):医師の評価を前提に、経過をみる
軽度の貧血にあたります。 疲れやすさや眠気など、日常生活での軽い不調がみられることがあります。初回は医療機関を受診し、原因を確認したうえで、医師の判断により食生活の見直しを含めた経過観察となるケースもあります。数値が改善しない場合や症状が続く場合には、自己判断せず、再度医療機関で相談しましょう。
9~7g/dl(中等度):医療機関を受診し、原因に応じた治療を行う
中等度の貧血にあたります。 動悸や息切れなどの症状が現れやすく、原則として医療機関での評価と治療が必要となるレベルです。自己判断での食事療法だけに頼らず、早めに内科や血液内科を受診し、原因に応じた治療を始めることが大切です。
6g/dl以下(重度):早急な対応が必要になることがある
重度の貧血にあたります。 症状や経過によっては、入院や輸血などの緊急対応が必要になることがあります。強い息切れ、動悸、めまい、胸痛、意識が遠のく感じなどの症状がある場合は、速やかに医療機関(救急外来を含む)を受診してください。心不全などの合併症を引き起こすこともあるため、放置することは危険です。
軽度は生活改善を基本に、中等度以上は医療機関の受診を検討する

ヘモグロビンは、体に酸素を届ける重要な役割を果たしています。数値が低すぎても高すぎても健康リスクが高まるため、定期的な血液検査での確認が大切です。
軽度の貧血では、医師の評価により原因が明らかな鉄不足で、症状が軽い場合に限り、食生活の見直しで改善することもあります。一方で、中等度以上の貧血では、早めに医療機関を受診し、原因に応じた治療を受けることが重要です。
まずは現在の食生活を見直し、原因に応じて必要な栄養素を意識することから始めましょう。そして、定期的な血液検査で、数値の変化を確認しながら、必要に応じて専門医の診断を仰ぐ──これが理想的なステップです。
健康的な毎日を過ごすためにも、まずは自分の体の状態を知るところから始めてみましょう。
監修:山本佳奈医師
コメント:ヘモグロビン値は、貧血の有無や重症度を判断する重要な指標ですが、数値だけで原因や対応が決まるものではありません。「少し低いだけだから大丈夫」と自己判断してしまうことで、鉄不足以外の原因を見逃してしまうこともあります。
気になる症状がある場合や、数値が改善しない場合には、軽度であっても早めに医療機関で相談することが大切です。この記事が、ご自身の体の状態を知り、無理のない形で適切な行動を考えるきっかけになれば幸いです。


