「鉄分は意識して摂っているのに、なぜか疲れが取れない……」そんな経験はありませんか?
実は、その原因は「鉄分の吸収率」にあるかもしれません。
鉄分は、ただ摂るだけでは十分とは言えません。体内にしっかりと吸収されてこそ、本来の役割を果たします。
本記事では、鉄分の吸収を助ける栄養素とその含有食品、効果的な食べ合わせの実例、さらに吸収を妨げる食品とその対策まで、わかりやすく解説します。
「毎日の食事で鉄分不足を効率よく改善したい」と考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
鉄分を摂っても疲れやすい理由|吸収率がカギ!
鉄分には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があり、それぞれ吸収率に大きな違いがあります。
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ヘム鉄:動物性食品に含まれ、吸収率は15〜25%と高め
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非ヘム鉄:植物性食品に多く含まれ、吸収率は5〜10%程度と低め
このように、どれだけ鉄分を摂取していても、体内にうまく吸収されなければ、十分な効果は得られません。
鉄分不足を改善するには、「吸収率を高めること」が何よりも重要です。
鉄分の吸収を助ける5つの栄養素とおすすめ食材一覧
今回は、鉄分の吸収を高める5つの栄養素と、それらを多く含む、家庭で使いやすい代表的な食材をご紹介します。ここで紹介する栄養素の含有量は、すべて食品100gあたりの数値です。これらを参考に、日々の食生活に取り入れてみてください。
ビタミンC|非ヘム鉄を還元して吸収しやすく
- 赤ピーマン(生):170mg
- ブロッコリー(生):120mg
- キウイ(生):140mg
- いちご(生):62mg
- みかん(生):33mg
たんぱく質|ヘモグロビンの材料になる
- 鶏むね肉(皮なし・ゆで):30.4g
- 納豆(1パック50gあたり):8.3g
- 木綿豆腐:6.6g
- 卵(全卵/生):12.3g
- 牛ひき肉(焼き):26.4g
ビタミンB12|赤血球の成熟をサポート
- ツナ缶(水煮):2.0μg
- 卵(全卵):1.1μg
- 牛乳(普通乳):0.4μg
- プロセスチーズ:1.5μg
- まいわし(生):15.7μg
葉酸|細胞分裂を助け赤血球の生成に必要
- ほうれん草(生):210μg
- ブロッコリー(生):210μg
- アボカド(生):84μg
- 枝豆(生):320μg
- オレンジ(果汁):60μg
果実酸(クエン酸・リンゴ酸)|鉄を包んで吸収促進
- レモン果汁:1.7g(クエン酸)
- グレープフルーツ:1.1g(クエン酸)
- りんご:0.5g(リンゴ酸)
- バナナ:0.4g(リンゴ酸)
- 梅干し:1.5g(クエン酸)
※栄養素の含有量は、食材や調理法によって変動することがあります。あくまで目安としてご活用ください。
鉄分を効率よく摂るための「食べ合わせ」実践例
日々の食事に、栄養素同士の相乗効果を活かしたメニューを取り入れることで、鉄分の吸収効率を高めることができます。
以下では、実際におすすめしたい、美味しくて手軽なレシピ例をご紹介します。
■ レシピ例
牛肉とブロッコリーのオイスター炒め(ヘム鉄+ビタミンC)
赤身の牛肉に含まれるヘム鉄と、ブロッコリーに豊富なビタミンCを組み合わせた一品です。栄養素の相乗効果で、鉄の吸収率が高まります。

ブロッコリーと豚こま団子の甘酢炒め(たんぱく質+ビタミンC)
ビタミンCを含むブロッコリーと、たんぱく質豊富な豚肉を組み合わせることで、非ヘム鉄の吸収を助けます。

厚揚げと小松菜のみぞれ煮(植物性たんぱく質+非ヘム鉄+ビタミンC)
厚揚げと小松菜に大根おろしを加えることで、植物性食品に含まれる鉄の吸収をサポートします。

ほうれん草とベーコンのチーズオムレツ(ヘム鉄+たんぱく質+ビタミンB12)
卵やチーズ、ベーコンなどの動物性食材を組み合わせ、鉄・たんぱく質・ビタミンB12がバランスよく摂れる朝食向けのメニューです。

ツナと明太高菜の豆乳にゅうめん(ビタミンB12+葉酸)
ツナや高菜、明太子の風味が活きた一品。豆乳ベースで栄養価も高く、鉄分の補給にも役立ちます。

鉄分の吸収を妨げる食品と避けるべきタイミング
一方で、鉄分の吸収を妨げる成分を含む食品にも注意が必要です(※5)。特に、これらを日常的に頻繁に摂取している場合、鉄分の吸収効率が低下している可能性があります。
- 緑茶・紅茶:タンニンが鉄と結合して吸収を阻害
- 牛乳・チーズ:カルシウムが鉄と競合
- 玄米・未発酵の大豆製品:フィチン酸が鉄と結合し排出を促す
たとえば、食事中に緑茶や紅茶を飲む習慣がある方は、麦茶やルイボスティーなど、鉄の吸収を妨げない飲み物に置き換えてみるのもひとつの方法です。
ただし、これらの食品にも健康効果があります。重要なのは「摂取を避けること」ではなく、「摂るタイミングを工夫すること」です。
まとめ|吸収率を高めて鉄分不足を解消しよう
- ビタミンCや果実酸で非ヘム鉄の吸収を促進する
- たんぱく質、ビタミンB12、葉酸で赤血球の生成をサポートする
- 食べ合わせや摂取タイミングを工夫する
これらを少しずつ日常の食事で意識することで、活力ある毎日を過ごす第一歩になります。
さらに詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひご覧ください。


出典・参考文献
- ※1:理化学研究所「鉄分吸収の分子メカニズムを解明」(2018年) https://www.riken.jp/press/2018/20180820_1/
- ※2:『基礎栄養学 第5版』女子栄養大学出版部
- ※3:厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html
- ※4:J-STAGE「有機酸の鉄吸収に与える影響」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jnsv/42/6/42_6_509/_article
- ※5:農研機構「食品成分とミネラル吸収」 https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/nouson19_1.pdf