「貧血って、赤血球が足りない状態のこと?」――そんなふうに思っている方も多いのではないでしょうか。
特に、「最近なんとなく疲れやすい」「健康診断で貧血って言われたけど、よくわからない…」という方にとっては、血液のしくみを知ることが貧血への理解を深める大きなヒントになります。
この記事では、赤血球・白血球・血小板といった血液細胞の寿命や、どこでどうやって血液がつくられているのかをわかりやすく解説。さらに、貧血の種類と血液の関係についても紹介していきます。
読み終えるころには、「なぜ貧血になるのか?」「どう対応すればいいのか?」といった疑問がクリアになるはずです。
血液がつくられる場所と変化の過程
胎児から大人まで、造血の場所は変化する
血液細胞は、私たちが胎児のころからつくられています。最初は「卵黄のう」で始まり、胎児期の中盤には肝臓や脾臓が主な造血の場になります。そして出産が近づくころには「骨髄」が中心となり、成人後は骨髄だけで血液がつくられるようになります。
大人では一部の骨髄だけが造血を担う
赤ちゃんのころは全身の骨で血液が作られますが、成長とともにその範囲は限定的になります。大人になると、頭蓋骨・胸骨・背骨・骨盤などにある「赤色骨髄」でのみ活発に造血が行われ、それ以外の部位は「黄色骨髄」と呼ばれる脂肪組織に置き換わっていきます。
血液細胞の寿命はどのくらい?
各血液細胞の寿命一覧
血液細胞には種類ごとに異なる寿命があります。
細胞の種類 | 寿命の目安 |
---|---|
赤血球 | 約120日 |
血小板 | 約10日 |
白血球(好中球) | 数時間程度 |
白血球(好酸球) | 数時間~1日 |
白血球(リンパ球) | 数年~20年 |
単球 → マクロファージ | 約24時間 |
古くなった細胞は主に脾臓などで処理され、常に新しい細胞が骨髄でつくられ補充される仕組みになっています。
血液細胞のつくられ方と成熟のしくみ
すべての血液細胞の起源は「造血幹細胞」
骨髄のなかにある「造血幹細胞」は、すべての血液細胞の“もと”になる存在です。この幹細胞が分化・成熟していくことで、赤血球・白血球・血小板といったさまざまな細胞が生まれます。
赤血球の成熟には「エリスロポエチン」が不可欠
赤血球に分化した細胞は、「赤芽球」→「網赤血球」→「赤血球」と段階的に成長していきます。この過程で活躍するのが、腎臓でつくられるホルモン「エリスロポエチン」。赤血球の生産を後押ししてくれる大事な存在です。
貧血の種類と血液のしくみとの関係
貧血とひと口に言っても、原因やタイプはいくつかあります。ここでは代表的な貧血の種類をまとめました。
貧血の種類 | 原因 | 主な症状 | 対応策 |
---|---|---|---|
腎性貧血 | 腎臓でのエリスロポエチンの産生不足 | 倦怠感、動悸、息切れ | エリスロポエチン補充療法、腎機能の管理 |
鉄欠乏性貧血 | 食事や出血による鉄分の不足 | 顔色不良、めまい、集中力の低下 | 鉄剤の投与、鉄を多く含む食事 |
巨赤芽球性貧血 | ビタミンB12または葉酸の不足 | しびれ、疲労感、記憶力低下 | ビタミンB12・葉酸の補給 |
どのタイプも、「赤血球の生成がうまくいかない」「赤血球の働きが不十分」といった問題がベースにあります。造血のプロセスや栄養状態との関連が深く、それぞれに適した対策が必要です。



血液をつくるために必要な栄養素
鉄分やビタミンが豊富な食材を並べた食卓。血液の寿命を健康的に保つためには日々の栄養バランスが重要
造血には栄養バランスも欠かせません。中でも重要なのが以下の3つです。
栄養素 | 推奨摂取量 | 主な働き | 多く含む食品例 |
---|---|---|---|
鉄分 | 男性:7.0〜7.5mg/女性:10.5〜11.0mg/日 | ヘモグロビンの構成成分、酸素運搬に関与 | レバー、赤身肉、ほうれん草、小松菜、あさり |
ビタミンB12 | 2.4μg/日 | 細胞分裂やDNA合成をサポート | しじみ、あさり、いわし、卵、レバー、肉類 |
葉酸 | 240μg/日(妊娠中は増加が必要) | 赤血球合成、胎児の神経管形成に重要 | ブロッコリー、枝豆、アボカド、ほうれん草、納豆 |
これらの栄養素が不足すると、血液細胞の成熟やヘモグロビン合成が妨げられ、さまざまな種類の貧血を招くリスクが高まります。

まとめ
血液細胞は、寿命を迎えたら壊され、新たにつくられる──このサイクルが健康を支える土台です。
その中でも赤血球の働きは特に重要で、造血のしくみや必要な栄養素を理解することで、貧血の予防や改善につながります。
もし「最近疲れやすい」「貧血と言われたけど原因が不明」と感じているなら、ぜひ血液のしくみから体の声を聞いてみましょう。必要な栄養をしっかり摂ることが、元気な毎日への第一歩になります。

