「風邪がなかなか治らない」「なんだか疲れやすくて、あざもできやすい」――そんな症状が続いているなら、それはただの貧血ではなく、「再生不良性貧血」という病気かもしれません。
この病気は、血液をつくる力が弱くなり、体に必要な血液成分がうまく作られなくなる難病です。放っておくと感染症や出血など、命に関わるリスクも出てくるため、早めに正しく理解し、必要な治療を受けることがとても大切です。
この記事では、医学用語に詳しくない方でも理解できるように、再生不良性貧血の症状や原因、治療方法について丁寧に解説します。
読み終えたときには、自分や身近な人の健康について正しく知ることができ、治療に向けた一歩を安心して踏み出せるようになるはずです。
再生不良性貧血の治療法とは?
血液をつくる力を回復させることが治療の目的
再生不良性貧血の治療は、主に「骨髄移植」と「免疫抑制療法」の2つが中心になります。
症状が軽い場合は、経過を見ながら蛋白同化ホルモン剤を使うことがあります。ただし、このお薬には肝臓への影響や、男性的な変化などの副作用があるため、慎重な観察が必要です。
症状が進んでいる場合には、赤血球や血小板の輸血が行われることもあります。
骨髄移植と免疫抑制療法の使い分け
40歳未満で、HLA型が一致する兄弟姉妹が提供者としている場合は、骨髄移植が第一選択となります。それ以外のケースでは、シクロスポリンやATGといった免疫抑制薬による治療が行われます。
これらの治療は、自己免疫の影響で傷ついた造血幹細胞のはたらきを助け、再び血液をつくる力を取り戻すことを目的としています。
再生不良性貧血の特徴と他の貧血との違い
骨髄の造血機能に問題がある病気
再生不良性貧血は、骨髄にある造血幹細胞が減ってしまい、赤血球・白血球・血小板といった血液の成分が十分につくられなくなる病気です。
幹細胞とは、1つの細胞が分裂して別の種類の細胞になったり、同じ細胞を複製したりする力を持った特別な細胞です。
分化(ぶんか)とは、本来は単一、あるいは同一であったものが、複雑化したり、異質化したりしていくさまを指す。生物学の範囲では、様々な階層において使われる。特に細胞の分化は発生学や遺伝学において重要な概念である。
引用:ウィキペディア
この病気は厚生労働省の「指定難病」にあたります。鉄分不足による一般的な貧血とは異なり、血液そのものをつくるもとの細胞がダメージを受けることが、最大の特徴です。
症状の現れ方とその進行
再生不良性貧血では、すべての血液成分が減少するため、以下のような複合的症状が現れます。
赤血球の減少による症状
- 動悸
- めまい
- 頭痛
- 息切れ
白血球の減少による症状
- 感染症にかかりやすくなる
- 風邪が治りにくくなる
血小板の減少による症状
- 鼻血や歯ぐきからの出血
- 打撲していないのにあざができる
- 月経が長引く
主な原因と分類
先天性と後天性に分けられる
● 先天性(例:ファンコーニ貧血)
非常にまれですが、生まれつき遺伝的な原因によって発症します。
● 後天性(大部分を占める)
後天性の再生不良性貧血には、次のような原因があります:
- 薬剤性:糖尿病の薬、抗てんかん薬、解熱鎮痛剤などを使ったあとに発症することがあります。
- ウイルス性肝炎:B型やC型肝炎のあとに起こることがあります。
- 妊娠に関連するもの:妊娠中や出産後に発症・悪化する場合があります。
- 特発性(原因がわからない):最も多く、約90%を占めます。免疫の異常が関係していると考えられています。
発症の傾向と統計
年齢や性別による偏りは比較的小さい
難病情報センターによると、再生不良性貧血の発症には10代と60〜70代の2つのピークがあるとされています。男女差はあまりなく、わずかに女性のほうが多い傾向です。
また、厚生労働省の調査では、年間およそ1,000人が新たに診断を受けていると報告されています。
重症度分類とその基準
症状の重さによって5つのステージに分けられる
再生不良性貧血は、血液検査の結果や症状の程度から、以下のように5段階に分類されます。これは、どのような治療が必要かを判断する大切な基準になります。
ステージ | 重症度 | 主な診断基準 |
---|---|---|
1 | 軽症 | 以下の条件に当てはまらない場合 |
2 | 中等症 | 以下2つを満たす:網赤血球 60,000/μl未満、好中球 1,000/μl未満、血小板 50,000/μl未満 |
3 | やや重症 | 中等症の条件に加え、定期的な赤血球輸血が必要 |
4 | 重症 | 以下2つを満たす:網赤血球 20,000/μl未満、好中球 500/μl未満、血小板 20,000/μl未満 |
5 | 最重症 | 好中球 200/μl未満、かつ以下いずれか:網赤血球 20,000/μl未満、血小板 20,000/μl未満 |
引用:日本造血細胞移植学会 ガイドライン再生不良性貧血(成人)
まとめ
再生不良性貧血は、原因がはっきりしないケースも多く、治療には長期的なサポートが必要なこともあります。それでも、医療の進歩により治療の成果は上がっており、適切に対応すれば普段の生活を取り戻すことも可能です。
この記事のポイント
- 再生不良性貧血は、血液をつくる幹細胞が減ることで起こる難病です
- 赤血球・白血球・血小板のすべてが減少し、さまざまな症状が出ます
- 治療は、重症度に応じて骨髄移植または免疫抑制療法が行われます
正しい知識を持ち、早めに行動することが、ご自身や大切な方の健康を守る第一歩となります。

