「しっかり寝たはずなのに疲れが取れない」「なんとなく体がだるい」。 もしあなたがそんな不調を感じているなら、現在世界規模で問題視されている「貧血」が原因かもしれません。
世界保健機関(WHO)による推計では、世界人口の約20億人、つまり約4人に1人が何らかの貧血状態にあるとされています 。これは国際的にも重要な健康課題と位置づけられています 。
経済的には高所得国に分類される日本に住む私たちは「栄養失調とは無縁」と感じがちですが、鉄分摂取に関しては、海外と比べて国レベルでの対策が限定的なのが現状です。
今回は、世界と日本の貧血をめぐる状況を整理しながら、私たちが日常生活の中で自分の健康を守るためにできることを解説します。
世界人口の4人に1人が貧血 先進国でも油断できない理由

「貧血=栄養不足」と聞くと、食べ物が足りない地域だけの話だと思われがちですが、貧血は特定の人だけの問題ではありません。年齢や体力にかかわらず、多くの人に関わる健康課題です。
世界的に見ても、貧血は誰にとっても無関係ではない問題といえます。
貧血の多くは食生活と関連している
世界的に見て、貧血の大きな要因として、鉄分摂取不足を含む食生活の影響が指摘されています 。 しかし、鉄分が不足する背景は、国や経済状況によって異なります 。
国や経済状況によって「鉄分不足」の背景は異なる
国や経済状況の違いによって、鉄分不足に至る背景には差があります。
高所得国では、偏った食事や過度なダイエット、鉄の吸収に影響する生活習慣などが背景となることがあります。一方、低・中所得国では、農村部を中心に鉄分を多く含む動物性食品が十分に手に入りにくいことや、鉄分に限らず複数の栄養素が不足しがちな状況が影響しています。
このように、飽食の時代と言われる日本のような高所得国においても、食事内容によっては「隠れ栄養失調」に陥るリスクが指摘されています。このような背景から、高所得国である日本においても、鉄分不足は決して他人事ではありません。
海外で実際に行われている「鉄分強化食品」という対策

こうした深刻な現状を受け、世界中の多くの国では、国を挙げて「鉄欠乏性貧血」を減らす取り組みが進められています 。 その代表的な方法の一つが、私たちが普段口にする食品にあらかじめ鉄分を添加する「鉄強化食品」の採用です 。
主食や調味料に鉄分を添加する取り組み
各国の食文化に合わせ、以下のような食品への鉄添加が試みられています 。
- アメリカ・カナダ・スウェーデン:小麦粉、パン、シリアルなどの主食
- ベトナム:日常的に使われる魚醤(ニョクマムなど)
- 中国:醤油
このように、海外では、日常的に口にする食品を通じて、鉄分摂取を補いやすくする仕組みが整えられつつあります
日本は対策遅れ?そんな中、自分の身を守るためにできること

世界各国が具体的な対策に乗り出す中、日本ではどのような状況にあるのでしょうか。
日本の現状は、制度的な対策が限られている
海外では主食や調味料への鉄分添加といった国レベルの対策が進められている一方、日本では同様の制度的な取り組みは限定的なのが現状です。
「日本食は健康的」というイメージがありますが、現代の日本の食卓では食事量の減少や食の欧米化、加工食品の増加などもあり、意識せずに必要量の鉄分を摂取することは決して容易ではありません。
自分の健康は自分で守る意識を
制度による十分な対策が整っていない中では、私たち一人ひとりが鉄分不足を身近な問題として意識することが重要です。 貧血の自覚症状がない場合でも、鉄不足は静かに進行することがあります。以下のような工夫を日々の習慣に取り入れましょう 。
- 鉄の多い食品を積極的に選ぶ
- 赤身の肉や魚、小松菜やほうれん草などを日常の食事に取り入れる
- 食事で不足しがちな場合は補助的な対策も検討する
- 食事で不足しがちな場合には、医師や薬剤師に相談したうえで、鉄分を含むサプリメントや補助食品などを補助的に活用する
まとめ

世界では約20億人が貧血状態にあると推計されており、多くの国で食品への鉄添加など、国を挙げた対策が講じられています 。 一方で、日本ではこうした国主導の取り組みは限定的であり、日常生活の中で個人が意識することの重要性が指摘されています。
「自分は大丈夫」と思わず、日々の食事内容を見直したり、必要に応じて専門家に相談しながら鉄分補給を意識することは、自分自身や家族の健康を守るための大切な一歩となります。
なお、疲れやすさや体調不良が続く場合には、自己判断に頼らず、医療機関での検査を検討することも大切です。
執筆・監修:山本佳奈医師
コメント:
世界では、鉄分不足や貧血が深刻な健康課題として認識され、食品への鉄分添加など、国レベルでの対策が進められています。一方、日本ではそうした制度的な取り組みが十分とは言えず、知らないうちに鉄分が不足しているケースも少なくありません。
「なんとなく疲れやすい」「集中力が続かない」といった日常の小さな不調の背景に、鉄分不足が隠れていることもあります。まずは日々の食事を見直し、必要に応じて医療機関で相談することが、将来の健康を守る第一歩になります。本記事が、ご自身の体と向き合うきっかけになれば幸いです。


