「赤身の肉には鉄分が多い」と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
実は、血液や肉が赤く見えるのには、「鉄」や「酸素」、そして“ミオグロビン”や“ヘモグロビン”といった体内のたんぱく質が深く関係しているのです。
この記事では、肉の色がなぜ赤く見えるのか、またその違いが鉄分とどのように関わっているのかを、わかりやすく解説していきます。
貧血や鉄分不足が気になる方にとって、日々の食生活を見直すためのヒントとしてご活用いただける内容です。
鉄分が多い肉はどれ?結論から知りたい方へ
鉄分を豊富に含んでいる肉は、ずばり“赤身肉”です。
その赤さの正体は「ミオグロビン」という筋肉内のたんぱく質で、運動量が多い部位ほどミオグロビンが多く含まれており、色の濃さと鉄分の多さは比例する傾向にあります。
血や肉が赤く見える理由
赤く見える理由の鍵は、体内の鉄が酸素と結びつく性質にあります。
鉄の大半を占めるヘモグロビンの役割
私たちの体内に存在する鉄の約60〜70%は、赤血球に含まれる「ヘモグロビン」というたんぱく質の中にあります。
このヘモグロビンが酸素と結合することで、血液が赤く見えるのです。酸化した鉄、すなわち酸化鉄が赤く見えるのと同じ原理といえるでしょう。

筋肉の酸素貯蔵庫、ミオグロビンとは
ヘモグロビンが運んだ酸素を筋肉に蓄える働きをするのが「ミオグロビン」です。
構造はヘモグロビンと似ていますが、ミオグロビンはヘム1分子とグロビン1分子からなる単体構造で、筋肉の運動量が多いほどミオグロビンの量も増え、それに応じて肉の色も濃くなります。
動物や部位によって肉の色が違う理由
肉の色の違いは、筋肉の運動量やその性質によって決まるミオグロビンの量に影響されます。
牛肉と鶏肉の色の差とは?
鶏肉が白っぽく見えるのは、主に“速筋”という筋肉が多いためです。
速筋は瞬発的な動きに使われる筋肉で、酸素をそれほど必要とせず、ミオグロビンの量も少なめです。
一方、牛肉に多く含まれる“遅筋”は持続的に使われる筋肉で、酸素を多く蓄える必要があり、結果として赤く見えるのです。
白身魚と赤身魚の違い
魚の場合も同様に、行動量の違いによって身の色が変化します。
白身魚(タイやヒラメなど)は比較的活動範囲が狭いため酸素をあまり必要としませんが、マグロやカツオといった赤身魚は長距離を泳ぎ続けるため、酸素を貯めるミオグロビンが多く、肉質が赤くなります。
鮭はなぜ赤い?実は白身魚!?
鮭の身は赤く見えますが、その色はミオグロビン由来ではありません。
エビやカニに含まれる「アスタキサンチン」という赤い色素を摂取することで、体内に色素が蓄積し赤く見えているのです。
実際には鮭は白身魚に分類されます。
クジラの肉はなぜ濃い赤色なのか
クジラのように長時間水中で潜る哺乳類は、大量の酸素を必要とします。
そのため筋肉内に非常に多くのミオグロビンを蓄えており、その結果として肉の色が濃い赤になります。
戦後の日本では、クジラ肉が鉄分の補給源として一般的に食されていた時代もありました。
貧血対策として赤身肉を食べるべき?
レバーに含まれる“ヘム鉄”の特徴
レバーには鉄分が豊富に含まれており、特に吸収されやすい「ヘム鉄」として存在しています。
そのため、鉄分の予防的な補給には非常に適している食品といえるでしょう。
予防と改善では食べるものが異なる?
最近の研究では、すでに貧血と診断された人にとっては、レバーのような食品よりも、継続的に鉄分を吸収しやすい葉野菜や穀類の方が適しているケースもあるとされています。
「貧血にはレバー」という認識は古くなりつつあり、体の状態に応じて食品を選ぶことが求められるようになってきました。

まとめ
赤身肉の赤さは、ミオグロビンというたんぱく質に由来しており、それは鉄分と酸素を蓄える働きを持っているからです。
動物の種類や部位によって色が異なるのは、筋肉の運動量とミオグロビンの量によって決まります。
また、鉄分を効率よく摂取するためには、赤身肉だけでなく、吸収率の高い食材や組み合わせを意識することが大切です。
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