「朝からなんだかだるい」「ついイライラしてしまう」「最近、集中力が続かない」——そんな不調を感じたことはありませんか?その原因、もしかすると“鉄分不足”かもしれません。
鉄分といえば貧血を思い浮かべる方が多いですが、実はそれだけではありません。鉄は、呼吸やエネルギー代謝、さらには心の健康にまで関わる、私たちの体に欠かせない存在です。
この記事では、地球の成り立ちにまでさかのぼりながら、鉄分が持つ重要な役割をやさしく解説します。読み終えたころには、鉄分への見方がきっと変わっているはずです。
地球と鉄の深い関係
地球は「鉄の星」
少し視点を広げてみましょう。私たちが暮らす地球は、何でできているのでしょうか?
地球の個体部分のほとんどは、マグネシウム、ケイ素、鉄とその酸化物。この中でもっとも多いのが鉄で、地球の総重量の約30%を占めます。その含有率は太陽系の惑星の中でもトップクラス。まさに「鉄の星」と呼ばれるにふさわしい存在なのです。
鉄は地球重量の約30%を占め、その可採埋蔵量は約2,320億トンと、他の金属と比べて格段に多い。
引用:『鉄の起源 宇宙の創造から生物の進化まで』科学の世界 VOL.15
鉄が無ければ人間は存在しなかった!?
私たちが生きるために必要な酸素ですが、地球が誕生した当初は存在していませんでした。しかも、初期の微生物にとって酸素は“猛毒”だったのです。
しかし、鉄イオンが酸素と結びつき「水酸化鉄」として沈殿したことで、酸素が中和され、地球環境は変化していきました。もし海に鉄が存在しなければ、酸素は猛毒のままであり、生物は誕生しなかったかもしれません。
生命と鉄の進化
酸素は猛毒だった
今では欠かせない酸素も、かつては生命にとって危険な存在でした。現在でも「活性酸素」が老化や病気の原因になるように、当時の酸素の毒性は非常に強力だったと考えられています。
その酸素の毒性を和らげ、地球に生命が根づく手助けをしたのが、鉄だったのです。
動物の祖先「好気性微生物」の誕生
やがて鉄が地表に現れ、酸素をエネルギーとして利用できる「好気性微生物」が誕生。ここから生命の進化が加速し、ミトコンドリアを持つ私たち人類の祖先へとつながっていきました。鉄は、生命進化の立役者でもあるのです。
鉄の基本的な性質
鉄には2種類のイオン状態
体内にある鉄は、「2価鉄(Fe²⁺)」と「3価鉄(Fe³⁺)」という2つのかたちで存在しています。どちらも体の中でさまざまな働きを担う大切な成分です。
酸化と還元
鉄は酸素と結びつきやすく、すぐに錆びてしまう性質があります。これを「酸化」と呼び、逆に酸素が離れて元の状態に戻るのが「還元」です。
この酸化・還元反応は、私たちの体の中でもエネルギーを作り出したり、酸素を運んだりするために活用されています。
鉄分の3つの主要な働き
酸素の運搬と二酸化炭素の回収
私たちが吸った酸素は、鉄を含む「ヘモグロビン」によって全身へと運ばれます。酸素が多いところでは酸素とくっつき、少ないところでは二酸化炭素と入れ替える。この仕組みがあるからこそ、私たちは効率よく酸素を利用できているのです。
エネルギーの産生
酸素が細胞に届くと、体内ではATPという“エネルギー分子”が作られます。このATPがあるからこそ、心臓が動き、筋肉が動き、私たちは活動できるのです。鉄は、このATPを作るために欠かせない存在です。

神経伝達物質の合成
鉄は「ドーパミン」「ノルアドレナリン」「セロトニン」などの神経伝達物質を作る際に、酵素の働きを助ける“補因子”として活躍します。
これらの物質が不足すると、イライラしやすくなったり、気分が落ち込んだり、集中力が続かなくなることも。鉄分は、心のバランスにも関わっているのです。

その他の重要な働き
免疫機能のサポート
鉄分は、ウイルスや細菌と戦う免疫細胞の働きをサポートします。不足すると免疫力が低下し、風邪をひきやすくなったり、回復が遅くなったりすることもあります。
美容にも関わるコラーゲン生成
肌のハリや髪のツヤを保つコラーゲンの生成にも、鉄分が必要です。アミノ酸を変換する酵素が、鉄を使って働いているためです。美容面でも、鉄分は欠かせない存在です。
まとめと次に読むべき記事
鉄分は、酸素の運搬、エネルギーの生産、メンタルの安定、美容や免疫サポートまで、全身の健康を支える“縁の下の力持ち”です。
鉄の性質や歴史的な背景を知ることで、その重要性をより深く実感できたのではないでしょうか?
次は「鉄分を効率よくとる食事法」についてもチェックして、日々の食生活に役立ててみてください。

