「家族の中で、私だけすぐに風邪を引いて長引いてしまう」「しっかりと寝たはずなのに、朝から体がだるい……」
毎日、家事や仕事に追われる中で、こうした「なんとなくの不調」を見過ごしていませんか? そんなお悩み、実は「腸内環境の乱れ」と、「鉄分不足」が原因かもしれません。
実は、ウイルスや細菌から体を守る「免疫力」は、「腸」だけでなく、女性に不足しがちな「鉄分」と密接に関わっています。 いくら体に良いものを食べても、鉄分が不足していると、免疫細胞に必要なエネルギー代謝や働きが低下し、免疫力は十分に保てません。
この記事では、忙しい毎日でも無理なくできる、「腸活×鉄分」の食事術をご紹介します。
免疫力が下がる原因とは?貧血との深い関係

免疫とは、ウイルスや細菌などの外敵から自分を守るための「防御システム」のこと。この力が弱まると、風邪を引きやすくなるだけでなく、花粉症などのアレルギー症状が悪化したり、疲れが取れにくくなったりします。
免疫力が下がる原因には、加齢、ストレス、冷えなどがありますが、貧血気味の方にとって特に見逃せない原因が「鉄分不足に伴う体内環境の変化」です。
鉄分不足が「免疫細胞」を弱らせる

貧血(鉄欠乏性貧血)とは、全身に酸素を運ぶヘモグロビンの材料である「鉄分」が不足している状態です。 酸素は、全身に行き渡ることで、免疫細胞が正常に働くための代謝や増殖を支える重要な役割も担っています。
そのため、体内の鉄分が不足すると、免疫細胞の働きが低下し、ウイルスなどの外敵に対する防御力が弱まることがあります。「最近、風邪をひきやすい」「治るまでに時間がかかる」と感じる場合、それは体からの「鉄分が足りていない」というサインかもしれません。
免疫システムの司令塔!「腸内フローラ」の仕組み

体を守る力を保つうえで、鉄分と同じくらい重要なのが「腸」です。 実は、免疫細胞の多くは腸と深く関わって存在しており、腸は食べ物を消化・吸収するだけでなく、体内に侵入しようとする病原体から体を守る重要な役割を担っています。
お花畑のような「腸内フローラ」

私たちの腸内には、多種多様な細菌が数多く存在しています。それらが種類ごとに集まって腸内にすみ着いている様子が、まるでお花畑(フローラ)に見えることから「腸内フローラ」と呼ばれています。これは、腸内細菌の種類とバランスが多様であることを分かりやすく表した表現です。
この腸内フローラは、大きく分けて次の3種類の菌のバランスによって成り立っています。
- 善玉菌(ビフィズス菌、乳酸菌など): 腸内環境を整え、腸のバリア機能を支えます。
- 悪玉菌(ウェルシュ菌など): 増えすぎると、腸内環境を乱す原因になることがあります。
- 日和見菌(ひよりみきん): 善玉菌と悪玉菌のうち、優勢な方に影響を受ける菌です。
近年の研究では、腸内フローラのバランスが乱れることで、免疫機能の低下だけでなく、アレルギー症状や体調不良と関連する可能性が示唆されています。そのため、免疫力を保つためには、「善玉菌が働きやすい腸内環境」を整えることが重要と考えられています。
免疫力を上げる食べ物とは?「腸活」と「鉄分」がポイント

では、具体的に何を食べれば免疫力を保つことができるのでしょうか? ポイントは、「腸内環境を整える食材」と「免疫機能を支える栄養素を含む食材」を組み合わせることです。
【腸内環境を整える】発酵食品と食物繊維

まずは、腸内の善玉菌が働きやすい環境を整えるための食材を取り入れましょう。これらは「腸活」の基本です。
- 発酵食品(プロバイオティクス): 善玉菌を整える働きを持つ菌を含む食品です。
- おすすめ食材: 納豆、ヨーグルト、味噌、キムチ、ぬか漬け、チーズ
- 食物繊維・オリゴ糖(プレバイオティクス): 善玉菌のエサとなり、善玉菌が増えやすい環境を作ります。
- おすすめ食材: きのこ類、海藻(ワカメ、ひじき)、ゴボウ、バナナ、ハチミツ
★おすすめの食べ方: 「納豆(発酵食品)」に「めかぶ(食物繊維)」を混ぜたり、「ヨーグルト(発酵食品)」に「バナナ(オリゴ糖)」を加えたりするなど、発酵食品と食物繊維を組み合わせることで、腸内環境を整えやすくなります。
【免疫細胞を強くする】赤身肉とビタミン野菜

腸内環境を整えるのと同時に、免疫機能を支えるための栄養もしっかり補給しましょう。ここで重要なのが、貧血対策の主役でもある「鉄分」と「タンパク質」です。
- タンパク質: 免疫細胞や抗体を構成する重要な栄養素です。不足すると、免疫機能全体の働きが低下することがあります。
- おすすめ食材: 肉、魚、卵、大豆製品
- 鉄分: 全身に酸素を運ぶだけでなく、免疫細胞が正常に働くための代謝や機能にも関わっています。また、粘膜の健康を保つことで、ウイルスや細菌の侵入を防ぐ働きを支える役割もあります。
- おすすめ食材: 赤身肉(牛肉・カツオ)、レバー、あさり、小松菜
- ビタミンA・C: 喉や鼻などの 粘膜の健康を保ち、免疫細胞(白血球)の働きを助ける栄養素です
- おすすめ食材: ニンジン、ブロッコリー、カボチャ、キウイ、レモン
★貧血気味の方への最強メニュー:「牛肉とキノコのオイスターソース炒め」は、赤身肉から鉄分とタンパク質を、キノコから食物繊維を摂ることができる、栄養バランスのよい一品です。日々の食事に取り入れることで、免疫機能の維持と貧血対策を同時に意識することができます。
食事だけじゃない!免疫力を底上げする生活習慣

食事だけでなく、日々の生活習慣を見直すことも、免疫機能を保つうえで大切です。
- 質の高い睡眠をとる:
睡眠中は、体の修復や免疫機能の調整が行われる重要な時間です。睡眠不足が続くと自律神経のバランスが乱れ、腸の働きにも影響を及ぼすことがあります。まずは「日付が変わる前に寝る」ことを意識してみましょう。 - 体を温めて血流を促す:
体を冷やさないことは、血流を保ち、全身に酸素や栄養を届けるために重要です。入浴で体を温めたり、ウォーキングなどの軽い運動を取り入れたりすることで、血流の改善が期待できます。 - リラックスして「脳腸相関」を整える:
脳と腸は、自律神経を介して密接につながっており、この関係は「脳腸相関」と呼ばれています。強いストレスが続くと腸の調子が乱れやすくなるため、音楽を聴いたり、香りを楽しんだりして心身をリラックスさせることも、腸内環境を整える一助となります。
まとめ

免疫力を保つために、特別なことをする必要はありません。 鍵となるのは、「腸内環境を整えて善玉菌が働きやすい状態をつくること」、そして「鉄分を補い、免疫機能を支える栄養状態を整えること」です。
- 腸のために: 納豆やお味噌汁など、発酵食品を1日1回取り入れる。
- 免疫機能のために: 赤身肉や魚などから、鉄分とタンパク質を意識して摂る。
まずは今日の夕食に、発酵食品を一品プラスすることから始めてみませんか。 腸と栄養状態が整うことで、体は本来備わっている「守る力」を発揮しやすくなり、毎日をより元気に過ごせるようになるはずです。
執筆・監修:山本佳奈医師
コメント:
免疫力は、特別な食品や一時的な対策だけで高まるものではありません。
腸内環境や鉄分をはじめとした栄養状態は、日々の食事や生活習慣の積み重ねによって、少しずつ整っていくものです。
特に女性は鉄分が不足しやすく、「最近、風邪をひきやすい」「疲れが取れにくい」といった不調の背景に、鉄分不足が関係していることもあります。
できることから無理なく、発酵食品や食物繊維、鉄分やタンパク質を意識した食事を取り入れることが、体調管理の第一歩になるでしょう。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。内科医。日本医師会認定産業医。一般社団法人 日本貧血改善協会 理事として、貧血に関する啓発・記事監修・教育活動に携わっている。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)。

